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英雄たちの残したもの

先日、実家の墓参で訪れた長崎市内で、これまで見過ごしてきた二つの建築物に足を運びました。いずれも、長崎の世界的な歴史の深さと「英雄」の影を強く感じさせる場所でした。

 

長崎県美術館 ― 戦争を映す芸術

最初に訪れたのは長崎県美術館。ちょうど企画展「ゴヤからピカソ、そして長崎へ 芸術家が見た戦争のすがた」が開催されていました。ポスターにはゴヤの名作「巨人」が使われ、会場に入ると正面にはピカソがスペイン内乱を描いた「ゲルニカ」の原寸大複製が目を射ます。

展示室に進むと、ゴヤの版画集「戦争の惨禍」が解説付きで並んでいました。その舞台は19世紀初頭のスペイン独立戦争。フランス軍による住民や聖職者への虐殺・略奪・暴行が、鋭い筆致で繰り返し描かれています。

さらに奥には、原爆投下翌日の長崎を記録した山端庸介の写真をはじめ、被爆者の証言や惨禍を映し出す作品が展示されていました。戦争や権力の名のもとに繰り返される暴力の連鎖を目の当たりにし、胸の奥に深い虚しさが広がりました。

 

日本二十六聖人記念碑 ― 殉教の丘

次に訪ねたのは、日本二十六聖人記念碑。JR長崎駅近く、西坂の丘に立つ舟越保武(彫刻家・舟越桂氏の父)のレリーフです。

1597年、豊臣秀吉の命で26人のカトリック信者が処刑されました。内訳はヨーロッパからの宣教師、日本人信者、さらには青年や子どもも含まれます。京都で捕らえられた彼らは市中を引き回されたのち長崎まで歩かされ、この地で処刑されました。最後まで信仰を捨てなかったことから殉教の象徴とされ、後にローマ教皇によって「聖人」と列せられました。現在も国内外から巡礼者が訪れる国際的な聖地となっています。

 

「英雄」という存在の二面性

この二つの場所を巡りながら、共通して浮かんだのは「英雄の足跡」という視点でした。
一方にはナポレオン、もう一方には秀吉。

ナポレオンはフランス革命後の混乱を収め、ヨーロッパを席巻し、ナポレオン法典を残しました。秀吉は一農夫から天下人にのし上がり、戦国大名を次々に平定して天下統一を成し遂げました。いずれも「英雄」と呼ばれる存在です。

しかし同時に、彼らは数多くの文民を犠牲にする残虐な行為をも引き起こしました。快挙と惨禍が同時に並存するのが「英雄」の宿命なのかもしれません。

 

現代に問われること ― 成果と影の両面を直視する

私たちがいま生きる時代も、権力や意思決定の結果として、多くの人々の生活や生命が左右されます。だからこそ、過去の「英雄」が残した功績と暴虐、その二面性にどう向き合うかは、現代の私たち自身にも突きつけられた問いです。

この視点は、製薬の現場においても通じるものがあります。新薬や治療法は確かに「光」として多くの患者さんに希望をもたらします。しかしその一方で、患者さんの現実は治療そのものだけでは語り尽くせません。副作用や経済的負担、日常生活の不自由さ、さらには医師とのコミュニケーションにおける戸惑いや孤独感――こうした「影」の部分が常に存在します。

私たちが目指すべきは、成果の光を誇るだけでなく、その背後にある影に目を凝らし、患者さんの声や生活実感に真摯に向き合うことではないでしょうか。

長崎で見た美術と記念碑は、歴史の英雄たちの「光と影」を凝視することの大切さを静かに教えてくれました。そしてそれは同時に、私たちがいま患者さんとどう向き合うのかを考えるヒントを与えてくれるのだと思います。

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