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「トリニティ組織」と「患者ナラティブに基づく共感ワークショップ」との共通性〜参加者のシンクロが生む新たな価値創造のプラットフォーム〜


■『トリニティ組織 人が幸せになり、生産性が上がる「三角形の法則」』

つい最近、センサリングを用いたデータを活用してヒトや組織の研究でしScienceやNatureなどの一流学術誌でも論文発表をされている科学者、矢野和男氏による掲題の著書を読む機会がありました。
この本では、赤外線センサーを用いた何万人のヒトの動きによる何兆個ものビッグデータを元に、ヒトの幸福や組織の生産性をもたらす要素が解き明かされています。そこでは「AさんとBさんの繋がり」+「AさんとCさんの繋がり」という“V字型”の繋がりではなく、「AさんとBさんとCさん」の3名が互いに繋がり合っている「三角形」の繋がりが多いヒトほど幸福感が高く、三角形の繋がりの多い組織ほど生産性が高いという結果が紐解かれていて、とても興味深い内容です。(難しい科学の解説ではなく、読み易くお勧めです!)

 

■トリニティ理論が与えてくれた気付き

この本は、本当にいろいろな気付きを与えてくれました。そのいくつかを下記しておきます。
現代のように文明が高度化し、社会問題が複雑になり、将来の予想が立てられないような局面では、組織も多様性を維持し、柔軟な適応力を養わなければいけない
複雑で多様に見えることも、ある現実の背後にある法則によって統一的に理解ができる
法則を見出すためには、最初は個別具体的な現象をあるがままに観察するアプローチから始まり、データがあるしきい値を超えると見いだせるようになる
仕事や経済はモノすごいスピードで動いていて、電子メールやチャット、SNS、オンライン会議システム、スマートフォンなどの技術がそれを可能したものの、これらのコミュニケーションによる繋がりの大部分は「用件」だけの繋がりでV字繋がり、つまりヒトを幸せにするどころか、不幸にしやすい繋がりしかない
小学校の成績の良いクラスでは全体の動きに一体感があり、先生の発言や問いかけに同時に頷いたり、返事をしたり、字を書いたりして、身体活動がシンクロしていたが、悪いクラスでは逆でバラバラだった
生き物同士のシンクロは自然界に見られる普遍的な現象で、生き物は身体の深いところで本能的にシンクロを求めている
シンクロには、幸福感や仕事における生産性などを上向かせる能力があるにもかかわらず、現代社会ではシンクロの力をうまく活かせず、孤立や格差の深刻な社会問題を次々と生んでいる

 

■投稿上の患者ナラティブに基づく共感ワークショップ

わたしたちトランサージュは、従来からSNSやブログなどデジタル空間に発信されている投稿を集めて患者インサイトを分析するサービス、Patient Reader®を展開しています。
このPatient Reader®で、ひときわ特長的なプロセスに「共感ワークショップ」があります。
共感ワークショップは、マーケターやリサーチャーだけでなく、メディカルアフェアーズや患者支援プログラムや広報担当など、幅広い部門や職種からブランドに関わるメンバーを一堂に介して開催します。

共感ワークショップは先ず、参加者ひとりひとりが50件ほどの患者さんによる投稿を読み込むことから、スタートします。
「これは自分だったら」「大切な家族だったら」と想像しながら、いくつもの投稿に描かれている患者さんの体験や想いのナラティブを読み込むことで、心のどこかにあった“患者さんはこういうものだろう”という先入観が崩れ、想像以上にリアルで切実な現実が浮かび上がり、強い“共感”が生まれます。投稿を読む行為は、参加者ひとりひとりが、自分の中に“患者視点”という新たなレンズをしっかりと根付かせる大切な時間です。

その後、参加者はグループに分かれ、患者さんのナラティブから感じたことや、気付いた課題について自由に話し合います。たとえばマーケとメディカルと広報とが同じテーブルで「この言葉って、私たちの想定と違ってない?」とディスカッションする。この対話のプロセスで、お互いの視点や前提の違いが見えてきます。
つまり、ここで起きていることは、組織内で共感を共有し価値観や解釈をすり合わせる時間です。この段階で、バラバラだった専門性が“患者さんという共通の原点”で繋がり始め、理想的な診療を実現するための課題を患者視点で深く考察することができるのです。

ワークショップの後半では「優先すべき課題は何か?」「今後どんなことをしたら良いか?」などの仮説やアイデアに落とし込んでいきます。
「医師が説明してるつもりでも、患者さんは全然理解していない」
「治療の選択肢があっても、患者さんは“選べる状態”にいない」
そんな気付きから「この部分を支援できる資材が必要では?」「アプローチの切り口を変えるべきかも」といった具体的な施策のヒントが浮かびます。

共感ワークショップにおける一連の考察を通じて、自分自身の心が動き、チームとしての理解が深まり、「だからこの製品には意味があるんだ」と思えたとき、ブランド戦略は“魂のあるもの”に変わるのだと思います。

 

 

■トリニティ組織論と共感ワークショップの共通性

こうして両者を並べると、意外にも多くの共通性があることに気づきます。
ここで、そんな共通性を4つほどご紹介します。

【1】「個別の現象に丁寧に向き合う」アプローチの共通性
矢野氏のトリニティ組織論では、複雑な社会や組織課題に向き合うためには「個別具体的な現象をあるがままに観察すること」から法則を見出す必要があるとされています。
これは、共感ワークショップにおいて参加者が一人ひとりで50件以上の患者ナラティブを読み込み、先入観を捨てて「もし自分や家族だったら」と想像しながら個別の声に触れる時間との共通性を感じます。
つまり、ワークショップの出発点である「患者さんのリアルな体験に丁寧に向き合う姿勢」は、トリニティ組織における“個の場”と相通じていて、組織の変化を始める第一歩として共通の価値を持っている様です。

【2】「共感の場」における多様性の交差と価値観の開示
矢野氏が語る「三角形の繋がり」=“AさんとBさんとCさん”の全員が互いに関係し合う関係性が、幸福感や生産性を高める鍵であるという視点は、共感ワークショップで用いる方法である「多職種、いわゆるクロスファンクショナルな部門/職種の参加」と強く重なります。
参加者が職種や部門を超えて、患者ナラティブから得た気づきを持ち寄り、「自分たちの想定と違う点」「見えていなかった患者さんのペインポイント」などについて語り合う時間は、まさに三角形のような“対話による接続”を生み出します。このプロセスで、個々人が持つ多様な前提や価値観に基づく「共感」が開示されることで、組織の中で“多様な価値観”を語り合う場が自然に提供されることになります。

【3】「シンクロ」が生むチームの方向性揃え
トリニティ組織論では、繋がりのあるヒト同士の身体活動や想いのシンクロと幸福や生産性との関係性が述べられています。共感ワークショップでは、投稿読解→気づきの共有→課題の定義→施策への仮説立案という一連のステップを、複数職種のメンバーが同じテンポや同じ枠組みで取り組む構造で設計しています。
結果として、この「プロセスの共振性」がトリニティでいう“シンクロ”を生み出し、チーム内に暗黙の一体感や連帯感を形成しているのだと考えられます。事実として、参加いただいた皆さまから「チームとしての結束が生まれた」といった声を非常に多くいただいています。つまり、共感ワークショップの“構造的なシンクロ”を仕掛ける設計が、トリニティ組織の要素である「深層的なつながりによる集団の整流化」を促進する場になっているのではないかと考えられます。

【4】共感から戦略へ──「個→共→実」の一連考察によるトリニティ組織論の実装化
共感ワークショップの後半では、患者ナラティブから得られた気づきや対話をベースに、「優先課題の特定」や「戦略の再構成」に発展していきます。情緒的な共感だけで終わらず、仮説やアイデアを具体的な戦略・資材・アプローチに落とし込む点で「意味と行動をつなげる力」がこのワークショップの真骨頂です。つまり、共感ワークショップは「個→共→実」の三位一体を自然な流れで体験できる場であり、トリニティ組織の理論を実践に翻訳した形とも言えるのかも知れません。

 

■ぜひ、一度体験してみてください

この様に、トリニティ組織論が示した三角形の繋がりやシンクロは、期せずしてこの共感ワークショップで実装化されていると考えられます。その意味では、共感ワークショップこそ、組織およびブランドのこれからの成長を形作るための、未来志向の戦略構築プラットフォームだと信じています。
「共感」を戦略の起点に据える
それは、これからの時代における医薬品マーケティングの大切な進化です。
製品ライフサイクルのどのフェーズでも「自分たちの提供価値を見直したい」と感じたときにはぜひ、体験してみてください。

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