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5%の違い

オリンピック表彰台の全員が使っていた、超優れモノの大阪発スキー板

 

北京冬期パラリンピックが今夜から開幕されますが、先日までの冬期オリンピックではカーリングを含め日本選手の活躍も話題になりました。

そんな中、男女のフリースタイルスキー・モーグルで表彰台に上がった選手全員が同じ日本のメーカーのスキー板を履いていた、というはなし、ご存知でしたか?

2月24日の東京新聞によれば、ID oneという大阪に本社のあるこのメーカーは従業員4人で、スキー板は2000年から取り組み始めた小さな新興企業だというのですが、驚きです。

この記事によれば、開発のきっかけは社長さんが親交のあった上村愛子さん(当時現役)のためにスキー板を作ることを決心したことでした。「ぴたりとバランス良く雪面に着き、ねじれの少ないスキー板」コンセプトに、当時は一般的だったポリウレタンではなく国産天然木を使用することでこれを実現しているそうでます。

 

海外選手団コーチが語る「他社スキー板との違いは5%」

興味深いのが、社長が海外の選手団のコーチに聞いたというはなしです。

「わたしたちのスキー板と他のスキー板の違いは、体感的に表現すると『5%ほど』だそう」

この記事を書いた記者さんは、雑誌での商品テストの経験が長かったそうで、「家電もクルマもメーカー間でほとんど差はないが、ほんの僅かな差こそが、使用感や満足感に決定的な違いをもたらしている」と締めくくっています。

翻って、医薬品はどうでしょうか。例えば、新型コロナ・ワクチン。

国内での使用はファイザー社とモデルナ社の2製剤に絞られていて、副反応などにおいてこの2剤の若干の違いが確認されていますが、大きな差は認められていないのが現状だと思います。

これまで盛んに開発されて来たプライマリ領域の治療薬においては尚更で、いま多くの製薬企業がフォーカスしているガンや免疫系希少疾患などの最新治療薬でも、一番手上市以外の製剤では先発品との顕著な差異を認めることは難しいケースが少なくないのが実情ではないでしょうか。

 

クスリでも、使用感や満足感に違いを出せるのか?

医薬品において、スキー板や家電品、クルマの事例の様に使用感や満足感に違いをもたらす要素は果たして考えられるのでしょうか?

先のファイザー社とモデルナ社のワクチンの場合、いま実施されている第3回目のワクチン接種では、どの自治体でもファイザー社製ワクチンの人気が高いという事実を見ると、副反応の発生率の違いが使用感や満足感の違いになっていると言えるかも知れません。ただ、この結果は、おそらく開発時には製造会社にも治験に携わった医療職者にも予測の及ばなかった不測の結果だったと考えられ、ID oneのスキー板の開発の様な「意図した違い」とは明らかに性質が異なります。

医薬品メーカーが使用感や満足感の違いをもたらすために考えるべきことは、薬剤特性や臨床的有用性などの製剤の化学的な特徴に限らない、のではないかと考えています。たとえば製剤の飲み心地や使いやすさ、パッケージの携帯しやすさやクスリの取り出しやすさ、などはクスリの使用感に繋がります。あるいは患者さんがクスリを飲み忘れてしまったり、お婆ちゃんやお子さんが必要以上のクスリを飲んでしまったその瞬間に、チャットや電話で相談できる、といった柔軟なユーザビリティは満足感に繋がります。

医薬品でもクルマでもスキー板でも、他製品と異なる価値を出そう、差別化された要素をわかってもらおう、と考えるときにはすべて同じ原点に戻るしかありません。

 

顧客の課題を見つめれば、そこに差別化のヒントがある

その“原点”とは『顧客の課題』です。

顧客、すなわちクスリで言えば「使用を決定する医師」や「薬を必要とする患者さん、もしくは患者さんの隣で支援をしているケアギバー(ご家族)」といった方々が、“治療を選択するシーン”や“薬を決めるシーン”、“決められた薬を使って治療しているシーン”などで、どんな悩みを持ち、どんなことを感じ、どんな不自由を経験しているのか、生の声を聴き、彼ら彼女らの課題(理想と現実のギャップ)を見つめることが、5%の差別化に繋がると考えています。

 

 

 

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